世界最大規模の大仙古墳(仁徳天皇陵)を筆頭に多数の古墳が集中する百舌鳥(もず)古墳群。この百舌鳥の地の東部に、東百舌鳥(ひがしもず)幼稚園はあります。
訪園すると、園長の樋口豊先生と名誉園長の樋口玲子先生とが迎えてくださいました。玲子先生は、園の設立当初から園長を務められ、平成23年度から豊先生にバトンタッチされました。
園では丁度、園児たちが「子どもシアター」の練習をしているところでした。子どもシアターとは、2歳児から年長児までのクラス単位で取り組む劇遊びで、2月に保護者に発表されます。
「最近、セリフの覚え方が変わりました。セリフを一語一語区切って暗記していたのが、年長児くらいになると、長セリフを一気に覚えるようになるのです。石井方式の効果がこのような所にも表れているのかもしれません」と豊先生。同園は石井方式を取り入れて10年が経っています。
玲子先生が、東百舌鳥幼稚園のモットー「自然に生き生きと」について語ってくださいました。
「『自然に』と言っても、それは好き勝手にとか野放図にという意味ではありません。梅の花には美しく咲き香る時季があるように、寒い冬を越すなど厳しいくらいのルールに従っています。子供が自然に生き生きと輝く姿は美しい。でも、美しく生きるためにはルールがあることを、園児たちにさりげなく気づかせたいのです」
音楽教育にも力を入れられ、本格的な発声練習や和太鼓、マーチングなどに取り組まれています。毎年12月には「子ども音楽会」を盛大に開き、園児たちが合唱や合奏、音楽劇などを披露しています。日頃の音読も一役買っているのでしょうか、優れた発声と表現力です。幼年国語教育会主催の音読コンクールでも優秀な成績を収め、この音楽会の中で賞状が授与される光景が見られます。
文武両道で、運動面は毎朝のサーキット活動と、温水プールでのスイミング活動を実施。課外教室として空手や剣道の稽古も行われています。
開かれた園を目指して、保護者が教育体験する「一日先生」の制度も導入。これは、園児のお父さん・お母さんに平日の仕事を休んで園の先生として教育に携わってもらうもの。いわゆる保育参観では日頃と異なる雰囲気になりがちなのに対し、「一日先生」として園に入れば、保護者にとって普段の様子により近い子供の姿を見られる良い機会になります。
「子供が面白いと感じるものを与え、子供の興味を引き出すことが大切です。喜んでしたことは、よく身に付きます」と玲子先生。豊先生は「東百舌鳥の園児たちは、『先生、次何やるの?』と目を輝かせて待っています。ベルトコンベヤー式に何かの作業をする、させられているのではなく、やりたい気持ちに満ちあふれています」とおっしゃいました。魅力的な園児と、そのような子に育てる同園の魅力が伝わってきました。