金沢駅よりJR七尾線に乗り換え約30分。横山駅に降り立つと園長先生が自家用車でお迎えに来てくださりました。幼稚園に着き玄関に入ると壁面に「百人一首」「俳句」「論語」などが貼られています。登園する子供たちに現場の先生がにこやかに指導されていました。
昭和11年に開園した木津幼稚園は、平成30年4月1日より幼保連携型認定こども園として変革を迎えられました。同時に施設整備を行われ完全耐震化。さらに、少人数クラスへの対応や、螺旋(らせん)滑り台の設置、太陽光や風力発電システム、雨水利用散水、BIG黒板の導入など、子供たちの知的好奇心を刺激する環境も整えられました。雪や雨の多い北陸では晴れ間が少ないため、外遊びの活動を大切にされています。その中の一つがBIG黒板です。本来、室内で使用する黒板を屋外にも設置されました。子供たちが思い切って落書きや自分自身を自由に表現できるものを書き綴ってほしいとの願いからです。言語活動が外で行える特殊な環境を、子供たちがどのように利用して成長していくかが楽しみだと園長先生はお話しくださいました。
石井方式との出会いは昭和49年。現在の理事長先生が石井勲先生の講演をお聴きになり衝撃を受けたということです。半信半疑で始めた漢字教育は今では生活の中に根付き、毎朝の日課や日々の活動に自然と馴染むよう工夫されています。開園当初より「明るく、正しい、賢い子」を教育目標に日々励んでおられますが、漢字教育を始めてからは「集中力」「感性」「聞く力」「想像力」「人間関係力」など様々な分野で目に見えない「非認知能力」が伸びていることを実感しておられます。ただ、この非認知能力は、数字で測ることのできない、証明できないという点で良い面と悪い面があります。このことを保護者に理解していただくには、実際に体感してもらわなければ伝わらない、その点が少々もどかしく、1回の訪問では理解していただけないことが多いと園長先生はお話しされました。測らず、比べず、強要せず、保育教諭が楽しそうに面白そうに見せる・聞かせるだけで、子供たちは興味や関心を示してくれます。そして、反復することにより子供たちの目が輝き、それを称賛することで意欲的になるということです。
例えば、「仏様は慈悲の心で皆を見守ってくださいます。」と漢字を使って書き、話します。すると、子供たちは自ら良い子に育っていくよう努力します。副産物的に想像力が伸び、人間関係力も向上します。こうして、多角的に子供たちに作用するわけです。
「言語は教育の根幹で、子供たちの素養の源です。しっかりと話を聞き、活動をする。言語能力を高めることがまさに『明るく、正しい、賢い子』への近道であり、日本を、世界を担う子供たちの大切な一歩になるに違いない」と力強く語ってくださいました。