今回は本州最南端の町、和歌山県串本町にある「上野山こども園」をお訪ねし、上地奈奈園長先生にお話をお伺いしました。
海、山、川と自然豊かな環境に恵まれ、見晴らしの良い高台にある園舎には、0~6歳児の約170人の子供たちが通っています。3年前に新しくなった園舎に入ると、広い円形のエントランスには太陽の光が差し込み、子供たちの元気な声がこだましていました。
上野山こども園は串本町にある民間で唯一のこども園です。そのため、「子供たちに来てもらえるこども園」をモットーに掲げ、園の特色を出すために、立腰、体育ローテーション、0歳児にベビーマッサージを取り入れるなど、さまざまな取り組みをされています。
そしてその一つが、漢字かな交じり絵本の音読です。前田紀代子理事長先生の「絵本好きの子供を育てたい」という強い思いから、12年前に導入されました。はじめの2年間は、試行錯誤で子供たちに戸惑いもあったそうですが、先生方自身が絵本を楽しんで読んでいるのを見て、子供たちも自然と絵本が好きになっていったそうです。
平成28年度音読コンクールでは年長の部で優秀賞金賞を受賞するなど、毎年のように目覚ましい成績を残されています。
園では音読の質を上げるために、月に1度、絵本の勉強会を行っています。理事長先生や園長先生をはじめ、先生方が参加し、お話の解釈の仕方や読み方などを話し合い、お互いのモチベーションを高め合います。
漢字かな交じり絵本を導入してからは、子供たちに変化が見えたと、上地先生はおっしゃいます。
「運動会などイベントの練習をする際に、今までは音楽や振付を変えると、それに対応するまでに時間がかかることがありました。けれど、導入してからは、そういった変更などに対する飲み込みが早くなり、子供たちの理解力が深まったように感じます。また、掲示物なども漢字にすることで、ひらがなよりも意味を捉えやすくなり、内容がすぐに頭の中に入るようになりました」
また、園の保育方針のひとつである“心豊かで思いやりのある子ども”は漢字かな交じり絵本を通して育まれているそうです。
「絵本を通じて、表現豊かになり、先生やお友達に対しても思いやりを持てる子供たちに育っています」
卒園までに様々な経験をして巣立ってほしいという理事長先生と園長先生の思いが、子供たちや先生方、そして保護者の方々に伝わり、強い絆で結ばれているように感じました。