太平洋に面した高知市から45キロ。四国山地の名峰、石鎚山に程近く、平家落人伝説の残る山深い土地にたたずんでいるのが池川保育園です。0歳から5歳まで49名で、そのうち6名が高知市などからの広域入園です(平成27年10月現在。以下同じ)。昭和26年、個人立認可保育園として現園長・山中倫雄先生のお父様の山中清秀先生によって創立され、県下でわずか2園残る個人立保育園の一つとして、特徴的な存在となっています。同園は、四万十川よりも美しい水質を誇る仁淀川の支流、土居川に面して立地。ぬくもりのある木造の園舎は、築60年余りの月日が経過しています。園を取り巻き、江戸時代から残る古い街道は、園児の散歩コースになっています。近所での田植えと稲刈りや、土居川での川遊び、山の畑での茶摘みなどを保育の一環として、高齢者と一緒に実施しています。超高齢化の進んだ限界集落の人々に、園児の声は多くの喜びを与えています。
平成13年、山中倫雄先生が現在の園長に就任されました。15年にNHKのラジオ深夜便で石井勲先生の漢字教育を聞かれた山中先生は、すぐに東京の実践園を訪ねられました。そこで石井先生直筆の漢詩を園児たちが朗誦しているのを聞き衝撃を受けられたそうです。その後、園児の名前を漢字表記にするなど、少しずつ漢字を用いた保育を実践してこられました。そして平成21年、漢字かな交じり絵本を用いた保育方法を導入し、今日に至っています。
毎日の保育では、立腰・かるた・論語・時計・百玉算盤および体育ローテーションなどを少しの時間でも取り組むよう心掛けるとともに、夏期指導者研修会や公開保育にも参加し、成果を上げていらっしゃいます。平成26年には、幼年国語教育会主催の講演会で、くわな幼稚園(三重県)の辞書引き遊びが紹介されたのを機にこれを採用。園児たちはひらがなに対する興味関心を芽生えさせ、辞書に付箋の花をたくさん咲かせています。
山中園長先生は目を輝かせておっしゃいます。「池川保育園は、『人と共に育ち、人と共に生きる力と人のために生きる力を育てる』保育を目指しています。それを実現すべく、乳幼児期に言葉の力を育てることに一層力を注ぎます。併せて、物事を推理・判断・認識する力を育てるために、新たに『積み木遊び』もカリキュラムに導入しました」。池川保育園の意気込みが伝わってきました。