かつて石井勲先生が園長を務め、幼児に対する漢字教育の理想型を追い求めた青桐幼稚園。木をふんだんに使った明るく温もりのある園舎、園庭に広がる冒険の丘やアスレチックのあちらこちらで、子供たちの明るい笑顔が弾けます。
教室に入ると、そこには石井先生の教えが息づいていました。「子曰、其恕乎。己所不欲、勿施於人」(子曰く、それ恕か。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ)という論語の一節が毛筆で書かれ、全教室に貼られていたのです。「人の痛みがわかる思いやりのある優しい心の子になってほしい」という園の方針と重なるこの言葉は、園児を迎え入れ、見守り育て、送り出すまでの3年間、いつも子供たちと共にあるのだそうです。
「幼児期は漢字を吸収する適切な時期です。漢字は子供たちにとって易しく楽しいもの。日常生活の中で、また遊びの中で漢字に触れ、自然に吸収していきます」と園長の恩田有希子先生はおっしゃいます。その言葉通り、子供たちは朝の会の漢字出席カードを元気に読むことから始まり、俳句・百人一首・唐詩を古典のリズムを楽しむように溌剌(はつらつ)と朗誦しています。そして、子供たちの視線を集める指導教材は、ほとんど全て担任の先生が心を込めて毛筆で書いておられるとのこと。
石井先生は「漢字一文字一文字に意味があり、イメージができるので理解が深まる」とおっしゃいました。園長先生は例えば、お茶会・お餅つき・節分・七夕など、行事のお話をなさる時、漢字を見せながら子供たちに一言一言語りかけていらっしゃるのだそうです。子供たちの心に園長先生ご自身のお話がしっかりと届くことを信じて。
石井先生から頂いた大切な言葉がもう一つ、園の先生方の子供への眼差しの中に生きています。それは、「良田を耕せ。子供たちの欠点ばかりに目を向けず、良い所を見つけて、褒めて、伸ばしてあげなさい」という言葉です。
外部講師による毛筆指導(年長児から)により素晴らしい字を書く子、体育指導によりその運動能力をいかんなく発揮する子・・・。石井先生の心を引き継ぐ先生方の温かいご指導により、青桐幼稚園の子供たちは、自信を持って力強く歩んで行くことができるのです。